あのイーハトーボの透き通った風、
夏でも底に冷たさをもつ青い空、
美しい森で飾られたモリーオ市、
郊外のぎらぎら光る草の波。
またそのなかでいっしょになったたくさんの人達、
ファゼーロとロザーロ、羊飼のミーロや、
顔の赤いこどもたち、地主のテーモ、
山猫博士のボーガント・デストパーゴなど、
いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えていると、
みんな昔風の懐かしい青い幻燈のように思われます。
では、わたくしはいつかの小さな見出しをつけながら、
しずかにあの年のイーハトーボの五月から十月までを書きつけましょう。